内田和成さんの「仮説思考」はさすがにこの分野の草分けだけのことはあって、非常に勉強になる良い本だと思いますが、それでも幾つか素直に頷けない部分があります。ここでは、そのうちの一つ、「良い仮説の条件」のお話をしたいと思います。
1 誤解されやすいまとめ方
最初にお断りしておけば、私は内田さんの仰っていることに決して反対ではありません。ただ、幾分誤解を招きやすいまとめ方になっているように思えるのです。内田さんは、良い仮説の条件として、「掘り下げられている」、「アクションに結びつく」を挙げた上、悪い仮説の例として「営業マン効率が悪い」、良い仮説の例として「営業マンがデスクワークに忙殺されて、取引先に出向く時間がない」を提示しています。仰っていることはその通りだと思いますが、これでは正解思考に慣れ親しんだ人には、誤解されやすいのではないかと思います。
まず、仮説思考はスピードが勝負のところ、仮説を立てるために「掘り下げる」プロセスが必要だと捉えられるのは得策ではないし、「掘り下げる」ことによって「当たりそうな仮説」を探そうという気にさせてしまったら本末転倒です。また、「アクションに結びつく」の方も、「使えそうな」仮説を探す方法に誘導してしまう惧れがあります。そうすると、せっかくの内田さんの良い提案があだになってしまうことになりかねません。
2 カール・ポパーに学ぶ
この点、「仮説思考」哲学の巨匠カール・ポパーは至って単純です。ポパーによれば、良い仮説とは「否定されやすい仮説」です。単純な仮説より情報量の多い仮説、曖昧な仮説より明晰な仮説、抽象的な仮説より具体的な仮説、確かめにくい仮説より確かめやすい仮説、これらは皆後者の方が「否定されやすい」が故に優れた仮説になるのです。
もちろん斯く言うからとて、荒唐無稽な仮説や矛盾を含む仮説が良い訳ではありません。仮説は、良い悪い以前に、目下解決しようとしている問題の答えになっていなければいけません。この点を含めて私なりに定義すれば、良い仮説とは、「解決しようとする問題の良い答えになっているけれども、何らかの意味で否定されやすい仮説」だと言えるのではないかと思います。
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