英語の時制がなぜ分かりにくいのか。他のヨーロッパ言語と比べると、その理由がすっきり見えてきます。
ヨーロッパ言語で「時制」は表現の要ですが、そのあり方は言語によってかなり違います。一口に「過去」と言っても種類があり、私が学んだ言語の基本的なパターンは、フランス語とイタリア語のように「複合過去」と「半過去」からなる形です。「複合過去」は、英語の「現在完了」にほぼ相当する複合型(ただ、haveの代わりにbe動詞を取る動詞があって、もう一段複雑です。)で、その出来事が過去に起こったことを単純に表すとともに、過去の経験を表します。これに対して半過去というのは、過去の進行中の出来事、過去に反復された出来事などを表します。
スペイン語には、「点過去」と「線過去」があり、概ねフランス語の「複合過去」が「点過去」、「半過去」が「線過去」に当たりますが、「点過去」は複合型ではなく独自の活用があります。そして、「点過去」とは別に複合型の「現在完了」も存在し、その分「点過去」は「終わってしまったこと」のニュアンスが強くなります。
フランス語の複合過去:
J’ai mangé.
半過去 :
Je mangeais.
スペイン語の点過去 :Comí.
線過去 :Comía.
ラテン語には複合型の時制はなく、過去は「完了」(「複合過去」、「点過去」に相当)と「未完了」(「半過去」、「線過去」に相当)で構成されます。他に過去完了と過去未来があるのですが、話がややこしくなり過ぎるので省略します。
さて、英語です。英語には、「半過去」、「線過去」、「未完了」に該当する時制がありません。しかし、過去形のほかに「現在完了」があります。その結果、本来水と油のはずの「現在完了」が「半過去」の役割を担うと同時に、過去の継続中の行為については、「過去進行形」という形が作られて、文法的にすっきりしない複雑な形になり、初めて学ぶ人には大変分かりにくくなってしまっているのです。これは、英語の世界の中だけで頭をひねってうんうん言っていても解決するものではなく、こうして他の言語と比べてみることで、初めてすっきり頭に入ります。
他の言語には存在する文法が存在しないために、表現のルールがややこしくなってしまう例は、何も英語だけに限った話ではなく、多かれ少なかれどの言語にもあります。簡単ではないですが、複数の言語を同時に学ぶことには、こんなご利益もあるのです。
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