説得の技術

 ここでは、私が現役の公務員時代に培った「人を説得する技術」を伝授したいと思います。

自分の論理では他人は動かない

 まず前提として、自分の論理で他人を説得することはできません。どれほど根拠やエビデンスを積み上げても、懇切丁寧に論理の筋道を辿っても、人が納得して「その通りだ」と言ってくれることはまずありません。そもそも、人を説得する必要があることというのは、意見や価値観の対立があったり、そもそも問題の捉え方が何通りもあったりする現実世界の厄介な問題ですから、数学の証明問題のように論理を組み立てることはできません。だから、自分の論理を精緻にしようという努力は、大抵の場合的を外しています。

相手の論理を“仮説として”組み立てる

 では、どうすれば良いかと言えば、「相手の論理」で説得するしかありません。ただ、相手の人も理路整然と話をしてくれるとは限りません。往々にして、自分の関心の強い部分にこだわったり、あんなこともこんなこともあると問題の列挙に終始したり、そもそも自分の中で考えがまとまっていなかったりします。そんな時は、自分で「相手の論理」を組み立てるしかありません。相手が言っていたことを、全体として整合性のある一つのロジックにまとめるとしたら、どうすれば良いかを考え、論理を組み立てます。必要な情報が全部得られていることは稀ですから、欠落した情報は大胆な想像力を駆使して推測します。どのみち相手が明示的に言ってくれていない以上、すべては仮説に留まることになります。

仮説をぶつけて修正する

 さて、そうして自分なりに「相手の論理」を組み立てられたら、相手にぶつけてみます。私の経験では、例えば議員さんに「先生の仰りたいことはこういうことでよろしいでしょうか?」などと言って仮説をぶつけてみると、非常に高い確率で賛同してもらえます。論理自体は普遍的なものですから、相手が論理的に考えていれば概ね当たりますし、相手が論理的に考えていなければ「自分の言いたかったことを整理してくれた」という印象を持ってくれます。仮に、「いや、そういうことではなくて…」という話になっても、焦らず話を聞きながら仮説を修正し、「ではこういうことですか」と改めて提示すればよいだけです。

「相手の論理の帰結」として結論を提示する

 そして、いずれの場合でも、「そうそう、私が言いたかったのはそういうことだよ。」と言ってもらえれば、8割方説得は終了です。後は、自分が説得したい結論が、「相手の論理」の帰結になっていると言えば、まず大抵の場合は納得してくれます。あなたの論理に従えば、必然的に「私が説得したいこと」が望ましいですよね、という訳です。自分の言いたいことを分かってもらえたと思っている時点で、相手は話を聞く気になっていますから、「論理」と「帰結」の関係は、無理のない範囲であればそれほど厳密である必要はありません。

 騙されたと思って、一度試してみてください。もちろん、ある程度の経験と一種の技術が必要にはなりますが、効果覿面とまでいかなくとも、かなりの確率で成功することは、保証して良いですよ。

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