英語の中のラテン語

 ここでは、英語の中に溶け込んで、普通に使われているラテン語の表現についてお話しします。

et cetraとad hoc

 米国人が、もしかしたらそれと気づかずにラテン語のまま使っている表現があります。日本語でも使われる「et cetra」や「ad hoc」などは、英語でも普通に使われます。それぞれ英語に直訳すると「and others」、「to this」です。前者はまあ、ラテン語の元の意味合いを残して使われていると言ってよいと思いますが、後者は元の意味からはすっかり離れている、というより、元のラテン語が「これに」というだけの余り大した意味がない言葉なのに、「ad hoc committee」のように「臨時の」とか「場に応じた」という元の言葉にない意味を読み込んでしまっているのです。

quid pro quo

 実は、私が米国滞在中に非常によく耳にしたラテン語があります。「quid pro quo」です。これも「ad hoc」と同じようにラテン語ではほとんど意味がなく、英語に直訳すれば「what for what」です。実はちょうどその頃米国の政治家が、政府援助と引き換えに他国政府と自分個人の利益になるような取引をしたのではないか、という疑惑が取りざたされていて、その「交換条件」を表す言葉が、このラテン語のままの「quid pro quo」だったのです。これなども、元のラテン語の意味合いからかなり大きく外れた使い方をされている例だと言えるでしょう。

per se

 他に、米国で非常によく耳にした言葉として「per se」があります。「それ自体としては」という意味合いで次のように使われます。
Catching a cold is not fatal per se, but it may cause other serious diseases if you don’t take care of yourself.
(風邪をひくこと自体は致命的ではないが、大事にしないと他の深刻な病気を引き起こすかもしれない。)

再帰代名詞の性質

この「se」はラテン語で「再帰代名詞」と呼ばれるもので、主として文中で主語と同一のものを受けるときに使われます。ラテン語には3人称の人称代名詞が存在しない(heもsheもなくて3人称はitだけ)ために指示対象が分かりにくいことがある一方、この再帰代名詞のおかげで混乱を防げるケースもあります。例えば英語の次のような文です。

George asked Jack what Emily had asked him.

この文でGeorgeは、「JackがEmilyに何を聞かれたかたずねた」可能性と、「Jackに自分がEmilyに聞かれたのと同じ質問をした」可能性の両方がありますが、ラテン語ではこういう場合に再帰代名詞と通常の代名詞を使い分けることで明確に区別することができます。尤もこの例が、英語の「下手な表現」に属することは言うまでもありません。できるだけ誤解のない明晰な表現を心掛けるべきことは、どんな言語でも同じです。

再帰動詞(代名動詞)

 ラテン語自体には再帰動詞(代名動詞)という概念はありませんが、この再帰代名詞が特定の動詞と結びついて特殊な発展を遂げたものが、スペイン語の再帰動詞であり、フランス語の代名動詞です。また、スペイン語はこの「se」をラテン語のように再帰代名詞として使って受動文を作ります。これはなかなか興味深い現象で、例えば、「米国では英語が話されています。」という表現は、
(英語)English is spoken in the US.
(フランス語)On parle anglais aux États-Unis.
(スペイン語)En Estados Unidos se habla inglés.
と、各言語で全く違う構造の文で表現されることになります。

per seを使ってみる

 さて、この「per se」ですが、うまく使うと、ネイティブに「英語ができる」と思わせる上で大いに効果があると思います。ちょっと気取って次のように言ってみるのは如何ですか。
Though this plan is not a bad one per se, I am afraid it may not fit well with the culture of our company.
(この案は、それ自体として悪いものだとは思いませんが、わが社の文化にうまく合わないのではないかと危惧します。)

5月の1Dayセミナーの募集は終了しました             


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です