不定詞の定まりどころ

 英語の文法を習うときに厄介なものの一つが不定詞です。ここでは、スペイン語と比較して、英語の不定詞の用法の特徴についてお話しします。

「動詞の原形」と不定詞

 英語の不定詞は「to+動詞の原形」だと説明されますが、実はこれはかなり特殊な形で、実は、スペイン語でもフランス語でもイタリア語でも「動詞の原形」と「不定詞」の区別がありません。英語で「動詞の原形」と呼ばれているものを、他の言語では「不定詞」と呼んでいるのです。この英語の特殊な不定詞の用法がどんな混乱を引き起こしているか、ここではスペイン語と比較しながら見ていきたいと思います。

スペイン語の不定詞

 スペイン語の場合、不定詞は動詞の原形そのものですから、前置詞を伴わず単独で主語にも目的語にもなれます。名指定用法というものです。また、形容詞的用法や」副詞的用法については、理論上いかなる前置詞とも結合できて、文中での機能はその前置詞に担わせることになります。「飲むための水」であれば、英語のforにほぼ当たる前置詞paraを使って、「agua para beber」と言えば良いことになります。

英語の不定詞のややこしさ

前置詞の選択

 ところが英語の場合、「water for drink」とは言えず、不定詞を使って「water to drink」と言うか、forを使いたければ動名詞で「water for drinking」と言うことになります。また、名詞的用法と副詞的用法が同じ形なので、「I stopped to talk with him」と言うと「彼と話すために立ち止まった」のか、「彼と話すのをやめた」のか区別がつきません。それで、区別をつけるために後者の場合は動名詞を使って「I stopped talking with him」と言いましょうなどと指導されることになります。ちなみにスペイン語では両者は全く違う表現になり、混乱は生じません。

look forward to

 そして、look forward toを使って何か言おうとすると、このtoは通常の前置詞(又は熟語の一部)のtoであって、不定詞を作れないから、「I am looking forward to see you tomorrow」とは言えず、動名詞を使って「I am looking forward to seeing you tomorrow」と言わなければいけないという、ほとんど全ての英語学習者にとっての躓きの石が現れたりするのです。ここでもスペイン語は、「Estoy deseando verte mañana」とシンプルです。

「助動詞」というカテゴリ

 さらに言えば、英語ではcanやshouldを使った文章で動詞の原形を動詞として扱うので、「助動詞」というカテゴリが必要になりますが、スペイン語では不定詞として扱うのでcanとshouldに当たるpoder、deberは動詞に分類され、「助動詞」というカテゴリを必要としません。

英語の勉強は大変

 これは、スペイン語や他の諸言語では人称と数による動詞の活用があり、不定詞は他のどの活用形とも区別できるのに対し、英語にはbe動詞といわゆる「三・単・現」以外の活用形がないため「動詞の原形」が現在形と区別できないことが背景にあると思われます。こうして見てくると、日本人だけではなくスペイン語話者にとっても、英語を学ぶのはなかなか大変なことだということが、お分かりいただけると思います。

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