ここでは、「仮説思考」を実践していると考えられる意外な人物、名探偵コナン君の推理法を探ってみます。
「名探偵コナン」とのお付き合い
アニメ、漫画、映画の世界で大人気の名探偵コナン。実は私の子どもも大好きで、一緒に家でテレビアニメを見たり、映画を見に行ったりしたものです。子どもが成長して親と行動を共にしなくなってからは、コナン君とも久しくご無沙汰になっていますので、かなり昔の作品を念頭にお話しすることになることを、初めにお断りしておきます。
「間違いねえ、でも証拠がねえ」
さて、コナン君が時々次のようなセリフをつぶやくのを、私は非常に興味深く感じていました。
「間違いねえ。犯人はあいつだ。でも証拠がねえ。」
漫画やアニメの中では読み過ごしてしまうかもしれませんが、改めて考えると、コナン君が何故「証拠がない」のに犯人が特定の人物に「間違いない」と言えるのか、不思議に思いませんか。コナン君自身が作品の中で明示的に説明してくれていない以上、推測にはなりますが、論理的にはこういうことではないかなという私の仮説を述べてみます。
より良い理論
問題を解き明かし、物事を説明する理論には、正しいか間違っているかとは独立に、「より良い理論」かどうかを論じることが可能です。例えば、より多くのことを説明できる理論は「より良い理論」です。理論Aが説明できることのほとんどを理論Bが説明できて、しかも理論Aでは説明できない重要な問題を一つでも二つでも理論Bが説明できるのであれば、理論Bは理論Aより良い理論だと言えます。また、説明できることがらの広さが全く同じであれば、より少ない仮定や前提から説明できる方が良い理論です。いわゆる「オッカムの剃刀」です。
コナン君の推理
さて、現実世界はオープンエンドですから、解決しなければならない問題は無数にありますが、漫画・アニメ・探偵小説の世界はクローズドエンドですから、解決すべき問題(謎)は、限られています。従って、解決すべき全ての謎を最も少ない前提で説明できる理論は、作品世界の中ではベストな理論になります。もちろん、「証拠がない」以上、理論は仮説に留まりますが、少なくとも作品世界の登場人物であるコナン君が、ベストな理論を「間違いない」と判断することには、十分な合理性があります。あとは、仮説が作品世界の中の「現実」によって検証できるかどうか、実験をすれば良いことになります。(ついでながらコナン君と服部平次君の推理が何故かぴたりと一致することが多いことも、同じ理由で正当化できます。)
「名探偵コナン」再発見
コナン君の探偵法自体は、シャーロック・ホームズと変わりない、観察から理論を導出する帰納法のスタイルになっているのですが、彼は、自分の推理が「必要な全ての謎を解けるベストな理論」にたどり着いても、それが「仮説」に留まることを自覚しているように見えます。もし、これを読んでご関心を持たれたら、「仮説思考」を念頭に置いて、「名探偵コナン」を見直してみてください。新しい発見があるかもしれませんよ
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