「報連相」を受ける上司の技術

 ここでは、部下から報告を受けるときに、私が上司として心掛けてきたことについてお話しします。

上司から見た「報連相」の実態

 私は20年以上管理職をやってきましたので、それこそ限りない回数、部下からのいわゆる「報連相」、報告・連絡・相談を受けてきました。当然、部下にも色々な人がいますから、極めて明晰かつ的確にポイントを押さえた分かりやすい報告をしてくれる人もいれば、率直に言って、直ちには何を言っているか理解することが困難な報告も、多々ありました。また、人によって性格はもちろん、興味関心や価値観が違うので、話をどこから始めてどういう風に進めるかも千差万別です。

上司への報告は仕事の本質ではない

 一方私は、上司への報告というのは、仕事の本質的な部分だと思っていません。公務員に限らず、全ての仕事はそれぞれの持ち場で何ほどか世の中を良くし、人を幸せにするためにやっているのだと思っていますから、部下には、私への報告に時間を取るくらいなら、もっと直接人のためになることをやってもらいたいと思ってきました。また、ある部下の報告はすんなり理解し、他の部下の報告は延々と聞き返す、という姿を見せるのは余り得策ではないと思ってきました。だからこそ、余り上手とは言えない部下の報告もできるだけすんなりと理解しようと努めてきたつもりです。

「仮説」を駆使して理解する

 方法論としては、ここでも「仮説」がものを言います。部下の話を聞きながら、常に相手の言っていることを整合的なロジックとして構成したらどうなるかを考え、頭の中で彼が報告しようとしていることが何であるかについての仮説を立てます。そして、彼の話が進むに従って頭の中で仮説を修正していき、話が終わったらその仮説を検証するための質問をする。確認できたら、その仮説が正しいものと判断して、彼に「良く分かったよ、ありがとう」と言って終了する。これでミッション・コンプリートです。これは、別に特別な方法ではなく、ある程度難しい話を聞いて理解しようとするときに、多くの人が無意識にやっていることだと思います。

実態は大いに問題あり

 さて、世の上司たちがみんな同じようにしているかと言うと、私の見た範囲では、全くそういうことはないようです。「俺に分からせるのは部下の責任」とばかりに、自分で理解しようとする努力を放棄して、「お前の言っていることは全然分からない。」などと怒り出す類の上司は、残念ながらまだまだ多いように見えます。また、部下の話をちゃんと理解するより先に、自分の言いたいことを言わずにいられない上司も、よく見かけます。もしかしたら報告した方は、内心「分からないのは、あなたの頭が悪いからだ」と憤っているかもしれないと思うケースは、困ったことに跡を絶ちません。

聞くことの「論理的側面」

 最近は、「聞くこと」について、傾聴だとか共感だとか心理的な側面が強調される傾向にあるように思います。それが大事でないと言うつもりは全くありませんが、まず相手が何を言っているかを理解するというベーシックな「論理的な側面」が満たされてこそ、その先に「心理的側面」があるのだと思います。世の上司たちが、もう少し「話をちゃんと理解する」ことに自覚的になって、ビジネス社会から無駄な時間と無用なストレスがなくなれば良いと思います。

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