ここでは、日本帰りの米国軍人の方々との関係について、自分の経験を踏まえて考えを述べさせてもらいます。
ある会議の昼食会場で
正座を見て駆け寄ってきた米国人
とある会議の昼食時間のことです。ものすごく大規模な参加者の多い会議で、主催者が昼食を用意してくれていたものの、昼食時間が限られていたこともあって会場は大混雑、私が少し遅れて行った時にはテーブルと椅子は全て埋まっていました。ただ、この事態を予測してか、床にマットが敷いてあるところがあったので、やむを得ずそのマットの上で食べることしました。そうなると長年の習慣として、マットの上に正座して食事をすることになります。
すると、その私の姿を遠くから見つけて、こちらに駆け寄ってくる人がいます。近寄ってきた背の高い米国人男性が、「あなたは日本人でしょう?」と言うので、そうだと答えると、彼は自分の経験を話し出したのです。
岩国基地での経験
自分は実は日本の岩国基地で勤務していたことがある。ある時テレビを見ていたら剣道の試合を放送していて、見ているうちにすっかり夢中になってしまい、何とかして自分でもやってみたいと思うようになった。とは言え、日本語が全く分からない米国人なんかの相手をしてくれる所があるのだろうかと、最初は不安だった。しかし、どうしてもやりたかったので、断られたら仕方がいというつもりで基地の近くの道場に行ったところ、いきなり「Hi! Welcome!」などと英語で歓迎してくれ、それ以来現在までずっと剣道を続けている。段位も四段まで取れた。そこで正座も覚えたが、米国で正座をしている人は見かけない。余りに懐かしくなって思わず駆け寄ってしまった。食事中邪魔をして申し訳ない。
日米交流の課題
日本帰りの軍人たちの日本に対する思い
聞けば、彼は今は軍隊を除隊して、そこそこの規模の市の幹部になっているということでした。米軍は世界中に基地を持ち、若い軍人が海外で数年勤務することは珍しくありません。日本はその中でも人気の高い赴任地の一つです。従って、実は米国には、軍人として日本に勤務して、帰国してから除隊して重要な地位についている人が少なくありません。しかも、そういう人たちの多くが、日本に対して非常に強い好感を持っています。もちろん、米国の地方政府にもそういう人はたくさんいます。私の在任中にサウスダコタ州の州議会議員で、日本の横須賀基地で勤務経験があるという方から、日本とサウスダコタ州の交流を活発化させたいから協力してくれというご依頼もいただきました。
現状と課題
ただ、残念ながら日本帰りの米国軍人の皆さんの日本への思いは、今のところ片思いになってしまっているのが現状です。米国は強烈なコネ社会なので、そういう日本帰りの軍人で、日本に好感を持ち、重要な地位についている人たちとの間でコネクションを築ければ、米国で仕事をする上での大きな強みになり、日本にとっても大きなメリットがあると思うのですが、私の勤務したJapan local government centerをはじめ、日本の政府系機関が、そうしたコネクションづくりに力を入れてきたという話は、少なくとも私が見聞した範囲ではないようです。
日本が米国との関係を深める上で、こうした「日本経験者ネットワーク」を戦略的に活かす余地は大きいと感じています。私としては、せめてそのサウスダコタ州の話を良い方向に進めて、そこを足掛かりに何らかの取り組みができないかという思いはあったのですが、果たせぬままに任期が来て、帰国することになったのは非常に残念です。
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