これから何回かに渡って、現在60代の私が中学・高校時代に使っていた教科書がどのようなものだったのか、ご紹介したいと思います。もしかしたら案外違わないじゃないかとお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんが、その当時の英語の授業は、今とは全く違う発想の下に行われていたということは、間違いなく言えると思います。私は決して「昔は良かった」と言いたいのではありません。恐らくどの世代にとっても、「自分たちが受けた英語の授業」以外の英語の授業のあり方を想像するのは、簡単なことではないでしょう。そこで、「自分たちが受けた英語の授業」を一旦客観視してみるために、今では時代遅れになった古臭い「英語の授業」の姿をお目にかけることも、あながち意味のないことではないと思うのです。
現在も手元に古い教科書がある理由
私は1964年の早生まれですから、中学校に通ったのは1976年の4月から1979年の3月まで、高校に通ったのは1979年の4月から1982年の3月までになります。その時代でも既に希少な存在でしたが、私の両親は「教科書」というものに対して一種アニミスティックな信仰に近いものを持っていて、教科書を粗末に扱うような子供は碌な人間にならない、まして教科書を捨てるなど言語道断だという発想の持ち主でしたから、私は全ての科目の教科書を、使わなくなった後も捨てずに保管してきました。ただ、それほど大事にしてきたという訳ではなく、大学生になっていわゆる検定教科書というものに円が無くなって以降は、自分が全ての教科書を取っておいたことすら久しく忘れていました。
改めてその存在を意識したのは、30代で結婚して子どもができて、購入した分譲マンションに移る時だったと思います。その時点で一番古いものは30年近く前のものでしたし、その間の日本の教育のあり方や教科書というものの姿が大きく変化していましたから、それは既に非常に貴重なコレクションになりつつありました。まして、一人の生徒が使った全科目・全学年の教科書が網羅されているものですから、なおさら価値があります。そう思って処分する気になれず、現在の住居に移動してきて更に30年近くが経ったというのが現在の状況です。
従って、古い英語の教科書が残っているのは、英語という科目に私が特別な思い入れを持っていたからではなくて、全ての教科書のコレクションの一部に過ぎないということになります。実際、成績の方は良かったものの、私にとって英語は好きな科目でも関心の高い科目でもなく、学校で課されるからそれなりに付き合ってきたというのが正直なところだと思います。実際私は、自分の中学・高校時代に行われていた英語の授業について、余り具体的な細部を思い出すことができません。ここでご紹介することも、当時私が考えていたことというよりも、今改めて当時の教科書を見て、現在の私が考えたことだとご理解ください。
現在ある教科書
今私の手元にある、自分が実際に使っていた教科書は以下の通りです。
【中学校】
・NEW PRINCE ENGLISH COURSE 1・2 開隆堂 改訂3版 1976
・同上 3 初版 1977
【高校】
・THE CROWN ENGLISH READERS 1~3 三省堂 初版 順に1979、80、81
・Our Companion to English Writing 1~3 開隆堂 4版 順に1978、79、80
・A NEW GUIDE to English Grammer 東京書籍 初版 1979
・Reading in English for students as a second language 文理 重版 1977
いずれもB6版で、高校のReaderが110ページほど、Compositionが50ページ強、Grammerが180ページほどで、中学の教科書が100ページ弱となっています。ごく一部にカラー写真を掲載したページもありますが、基本は全て単色で、特に高校の教科書ではイラストや図版も少なく、文字がぎっしり詰め込まれている印象があります。
ちなみに1970年代の後半というのは、学習指導要領に定められた学習内容が戦後最も多かった時期に当たります。英語の教科書はこれでも最も薄い部類に属し、高校セ・中学生は分厚い教科書を何冊も鞄に詰めて毎日学校に通ったものでした。
高校英語の科目構成
高校の教科書が、Reader(読解)、Composition(作文)、Grammer(文法)に分かれているのは、当然のことながら当時の英語の科目構成を反映しています。ただ、遠い昔のことで記憶が曖昧になっていますが、この3つが均等に扱われていた訳ではなくて、CompositionとGrammerは、あっても週に1回程度で、「英語の授業」と言えば基本的にReaderの授業を意味していたと思います。
一見してお分かりのように、この科目構成には、現在最も重要視されている「コミュニケーション」の要素が全くありません。英文の構造を理解し(Grammer)、その理解を元にして実際に書かれた英文を読み解き(Reader)、自分でも英文を構成してみる(Composition)というところで終わってしまっています。この点が正に強い批判を浴び、コミュニケーション重視、特にオーラルコミュニケーション重視の「英語教育改革」へとつながっていったのですが、学校の英語教育に対する批判が大きく盛り上がりを見せたのは、私が高校を卒業した後であり、高校を卒業するまでは、「学校の英語の授業とはこういうもの」と信じて疑いませんでした。
それでは次回以降、高校・中学、そして科目ごとに、現在の私の視点から見た半世紀前の教科書の注目すべき特徴をご紹介していきたいと思います。

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