ラテン語と日本語の共通点

 ここでは、ラテン語と日本語の意外な共通点についてお話しします。

1 ラテン語について

 古代ローマの言語として発生し、近代までヨーロッパ知識人の共通言語として重要な役割を果たしたラテン語は、近代ロマンス系諸語(フランス語、スペイン語、イタリア語など)の祖語でもあります。当然、日本語とは何の言語的つながりもなく、語彙も文法も全く異なります。しかし、学んでみるとラテン語には、他のヨーロッパ諸語にはないような日本語との共通点があることが分かります。

2 語順が自由

 最大の共通点は、語順の縛りが緩いこと、言い換えれば、単語を並べる順番が比較的自由だということです。もちろん、語順が自由な理由は全く異なります。日本語の場合は、その単語が文の中でどのような機能を持っているかは、「てにをは」と呼ばれる助詞で表現されるため、文節(意味のまとまりがある「単語+助詞」)同志を入れ替えても意味の変化が起きません。

 一方ラテン語は、動詞だけでなく名詞や形容詞にも語形変化があり、その膨大な語形変化を覚えるのは大変ですが(とは言えラテン語を「話す」必要はほとんどないので、読んだり書いたりする時にその都度調べればよいだけです。)、反面語形によって文の中でのその単語の機能が分かるので、極端に言えば、語順はほぼ無原則になります。実際、散文ではそこまで奇抜な語順は使いませんが、韻文では、韻律を優先するためにかなり奇妙な語順になる例が見られます。

 一つ例を挙げると、日本語の場合「白い鳥が赤い花のそばを飛ぶ」という文を「赤い鳥が白い花のそばを飛ぶ」と書き換えたら意味が全く変わりますが、ラテン語では、赤と白を入れ替えても(普通はやりませんが)元の意味が保存され、何とか理解することができます。

Avis alba apud florem rubrum volat.
Avis rubrum apud florem alba volat. 

3 巧拙が出やすい

 語順が自由だというものの、特に散文の場合、標準的な語順というものはあります。そして、標準的な語順では、主語—目的語—動詞(SOV)が基本形で、述語が文末に来る傾向があるのも、日本語との共通点です。そして、語順が自由な分だけ、並べ方によって、分かりやすくも分かりにくくもなるし、含蓄を持たせたり余韻を持たせたりという効果も出せます。身も蓋もなく言えば、文章の上手い下手が出やすいのです。語順の自由度が高い言語ほど、語順の選択が文体そのものになる。もしかしたら、この点こそがラテン語と日本語の最大の共通点かもしれません。

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