ユーティック先生との出会い
2016年中国雲南省大理市での国際つばき大会で、初参加でまだ右も左も分からない私に、早速元気よく話しかけて来た方がありました。その人は、なぜか大島公園に椿の化石が展示されていることをご存知で、「やあ、日本の大島から来た人だね。実は今晩『椿の歴史研究会』のミーティングがあるんだけど、そこで化石の話をしてくれないかな。」と、初対面の私にいきなり大変な話を持ち込んできました。
後で聞くとその人はユーティック先生というオーストラリアの偉い学者さんで、幾つもの要職を兼ねているらしいことが分かりました。偉い人ながら、本人は至って快活で人懐こくテンションの高い、かなりにぎやかな人で話しやすくはあったのですが、ユーティック先生とコミュニケーションを取るには、一つ大きな問題がありました。それがオーストラリア英語です。
オーストラリア英語の発音
国際会議の場でそんなに打ち解けた話をする訳ではないので、いわゆるスラングの問題ではありません。ほんの少しの発音の違いが、リスニングを極端に難しくしているのです。英米で「エイ」と発音する所が「アイ」になる、つまりSnakeが「スナイク」、Strangeが「ストラインジ」、Railroadが「ライルロード」になるだけなのですが、これが実に厄介です。例えば、「1989年:Nineteen-eighty-nine」という年号が、teenの最後のnと次の母音がつながって、「ナインティ―ナイティナイン」と発音されると、1999年と区別がつきにくく、直ちに1989年だと分かりません。更にmainとmine、bayとbuy、rateとrightのように、この母音の違いだけで識別される単語が非常に多く、これが一つの文の中で3つも4つも出てくるとコンテクストで判断することも困難になります。
皮肉な現象
国際会議ですから、イタリア人も、ポルトガル人も、中国人も、そして私たち日本人も、皆英語でプレゼンテーションをするのですが、全ての発表者の中で、誰にとっても一番聞き取りにくい英語で話したのは、皮肉なことに英語ネイティブであるはずのユーティック先生だったことは間違いありません。
オーストラリア人自身の経験
以来、このオーストラリア発音について当のオーストラリア人たちはどう考えているのだろうと疑問に思っていましたが、意外な形でそれを確認する機会が訪れました。米国滞在中に全米つばき協会の大会に参加した際、昼食会場でたまたま同じテーブルに座った高齢の女性が、オーストラリアから米国に来て、米国人と結婚して定住することになった方だと知って、思い切って聞いてみたのです。「ある国際会議でオーストラリアの方のプレゼンテーションを聞いたのですが、理解するのにとても苦労しました。皆さんも、やはり苦労されているのですか?」と聞くと、「あなたが外国人だから言うけど、アメリカに来たばかりの頃は、周り中何を言っているのか全く分からなくて、とっても苦労したのよ。アメリカ人は全然分かってくれなかったけど。」という答えが返ってきました。
その答えを聞いて、数年来の疑問が氷解するとともに、英語のネイティブでも英語のリスニングで苦労するんだな、と少々感心したのを覚えています。ましてや日本人である私たちが、「ネイティブのような」英語を使おうなどと考えることはありません。ネイティブだって色々なのです。
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